105号

路上に暮らす子どもや若者を支援するコミュニティーを育てよう!その1

会員 中村 怜奈

総人口約1億200万を抱えるメキシコ。世界最大都市の首都メキシコシティには約2千万人が暮らし、約3万人のストリートチルドレンが存在するといわれる。私は留学生として首都メキシコシティの大学でスペイン語や人類学を学ぶかたわら、今年3月から路上の子どもや若者を支援する現地NGOの活動にボランティアとして参加している。今回はみなさんに、現地NGO(エドニカ)の紹介と3月、4月のボランティア活動の報告をしたい。

★NGO「エドニカ」★

EDNICA=Educacion con el nino callejero i.a.p(Education with Street Child)。

1989年設立。路上に暮らす、あるいはこれから路上に出る可能性のある子どもや若者が存在するコミュニティーが、自ら彼らを支援し、問題を予防・解決していくように、コミュニティー自身の「支援活動への関心や参加」を促進し、その能力を長期にわたって育てることを目的に活動している。

1.活動内容

エドニカは、子どもや若者が定期的に通ったり、生活したりする施設はもたず、エデュケイター(専門家)が毎日、路上の子どもや若者、コミュニティーを直接訪れて働きかけることを、活動の中心としている。その他、出版活動も行なっている。現在、事務所内に、市民向けの図書館を公開することを計画中だ。

【例】モレーロス・プロジェクト

 2001年から行なっている、現在の主要プロジェクト。活動拠点は、メキシコシティの中心部にある地下鉄モレーロス駅、モレーロス市場とその一帯。

a) 対象者

・路上で生活する少年少女、若者。

・将来路上に出る危険性のある少年少女、若者。

・これらの子どもや若者を支援する人々。

・以上の人々とともに働くことに興味のある組織、団体。

b)目的

  ・長期間路上で働いたり、生活している子どもたちの成長を支える。

・すでに路上で生活をする若者たちのために、路上以外での生き方を提案する。

 c)5つのプログラム

  1.教育

2.健康

3.仕事

4.娯楽

5.文化・教養

*さらに具体的な内容は、次の活動報告で紹介することにしよう。

2.コミュニティー組織と社会ネットワークの役割

 a)コミュニティー組織

路上の子どもや若者を支援するために様々な形で活動している、同居住区内、同コミュニティー内のすべての団体、組織。コミュニティー組織のネットワークを形成するために、お互いの援助方法を理解し、問題への関心を一体化して、協力しながら働くことを目的としている。エドニカは、ストリ−トチルドレン問題(若者も含む)を解決させるためには、毎日彼らと生活を共にし、彼らが何を必要としているかを知っているコミュニティーとともに働くことが最善の方法だと考えている。

 b)社会ネットワーク

 商売人、警察、市内バスやタクシーの運転手、学生、支援者など。社会ネットワークの役割は、路上生活が習慣化することや新たな路上生活者が生まれることを防ぐことにある。関心のあるすべての人々が、子どもや若者の状況の改善に参加することにより、彼らが自分自身の生き方を改め、路上から抜け出すことを促す。

★ボランティア活動報告★

(*4月は職員の勉強会やカトリックの行事により休日が多かったため、主に3月の報告)

●モレーロス・プロジェクト−路上やコミュニティーでの活動―

 このプロジェクトには、現在3人のエデュケイターがおり(本来は4人。職員変更があり、後継者待ち。大半が心理学者)、各々が午前と午後に分け、1〜2のプログラムを担当している(月〜金曜日)。

a)活動対象者

1.モレーロス市場の子ども

2.1の子どもたちの親(市場の商売人。主に母親)

3.2以外の市場の商売人

4.市場周辺の商売人

5.4の子ども

6.路上生活の子どもと若者

7.4以外の市場周辺の人

b)ボランティア・スケジュール        

月曜日:1、火曜日:6と7、木曜日:2。すべて午後4時から1時間〜1時間半。私の役割は、各エデュケイターの補助、および記録係である。(数字はa)を参照。)

c)活動内容

1.モレーロス市場の子どもたち

 モレーロス市場は地下鉄の駅から徒歩2分。駅を出てすぐ左に、折り重なって眠っている子どもたちやドラッグを吸う子どもたちが見られる。目の前の大通りは車で埋め尽くされ、その合間をぬって子どもや若者たちが、騒音や排気ガスなんてなれっこという顔をして、車のガラス拭きをしてお金を稼いでいる。市場への道は大通りと交差し、お菓子屋、肉屋、タコス屋、パン屋、薬局、キヨスクなど、様々な露天が道を占め、排気ガスと食べ物の匂い、ゴミの悪臭、騒音、ほこりがすごく、顔を覆いたくなるほどだ。そして市場の出入り口にはドラッグ依存症の若者が3人、野良犬と一緒に寝ている。このように、モレーロス市場を取り巻く環境は劣悪であり、今は家族と一緒に暮らす市場の子どもたちが、将来的に家族との間に何らかの問題を抱えたなどの理由で路上に出る危険性が、非常に高い。そのような事態を予防することを目的に、NGOが毎週月曜日と水曜日の午後4〜5時に教育プログラムを提供している。まずエデュケイターが市場の各商売人にプログラムの提案と説明、そこへの参加の勧誘を行ない、市場側が提案を受け入れると、彼らはプログラム実行の協力者となり、教室を提供する。現在、市場出入り口手前の小さな倉庫を、教室として利用している。プログラムへの参加はボランティア制で、登録が必要。4歳から11歳の23人の子どもたち(男の子6人、女の子17人)が参加している。しかし、全員が出席するのはまれで、また時には非登録の友達を連れてやってくる子もいる。(非登録の子どもも親と一緒に参加を申し出れば、参加が可能。)参加者のうち、小学生は皆午前中学校に通っており、午後は親と一緒に働くということはほとんどなく、友達と遊んだり宿題をやったりと、自分の時間を過ごしている。また、友達、兄弟姉妹、親戚同士で誘いあって、アクティビティに参加している(メキシコの学校は午前部と午後部がある)。アクティビティは、健康、教育、教養など、内容やレベルが様々。

*これまで行なった内容*

・病気の部位と名前を覚える。(男の子の全身図に知っている病気の部位の名前を書き込む)

・絵本を読んで、足し算・引き算・暗記能力を高める。

・好きなもの、喜びを感じるものを絵で表現し、その理由を述べる。

(年少者は果物やお菓子など、年少者の男の子は自転車、女の子はエドニカをあげる子が多かった。)

・カードを使って子どもの権利を学び、具体例を考える。

・身の周りにあるコミュニケーション手段を雑誌から探し、その種類と方法を学び、最も好きなものを選ぶ。

・ドラッグとは何か、その種類、身体に及ぼす影響などの知識を得て、その他の健康に良いもの、害を与えるものの区別をする。

 その他、年に3回、子どもたちの親も含めての課外授業も行われる。1度目は4月の中旬に行われ、乗馬や釣り、ボート場のあるマルケッサというところで開催された私は授業があり参加できなかった)。

 

このプログラムに参加して最も感じることは、全体的にまだまだ体系化が必要だということである。例えば、内容によって年少者だけ、あるいは年長者だけがアクティビティに関心を示し、参加者全員が積極的に参加できるものは少ない。特に、4,5歳の子どもたちには配慮が必要だ。なぜなら今は、初めは年長の兄弟姉妹や親戚の助けをかりて取り組むのだが、すぐに飽きてアクティビティの内容自体も理解できてないことがほとんどである。各プログラム内容は、それまでの結果をもとにエデュケイターが1人あるいは2人で作成する。参加者全員が取り組める内容にするためには、まず年齢別などの最低2クラス編成にし、子どもたちの関心や希望も参考にしたうえで、各々にあったプログラムを構成するべきだと思う。だが、なにせ担当のスタッフが1人(女性)しかおらず、教室の不足などの問題もあり、簡単にはいかない。クラスに参加するには時間厳守が最低条件だが、時々スタッフも他の仕事の都合で遅れることがある。この場合、私や他のボランティアがいる時はカバーできるが、常勤のボランティアをつけるなどの対策も必要だと感じる。これらをスタッフと話し合ったところ、彼女自身も同じ問題を感じており、2クラス編成の話し合いを行なっているところだということだった。

2.1の母親たち

3.路上生活の路上生活の子ども・若者と市場周辺の商売人

4.感想

これらは、次回報告させていただきます。

(なかむら れいな/学生)


106号

路上に暮らす子どもや若者を支援するコミュニティーを育てよう!その2

会員 中村 怜奈

メキシコシティで活動する、現地NGO(エドニカ)の紹介と3月、4月のボランティア活

動の報告の続きです。

● モレーロス・プロジェクト −路上やコミュニティでの活動−

活動内容

2.モレーロス市場で働く母親たち

基本的に、担当の女性エデュケイター1名が、週に3〜4回、午前か午後に、市場の母親を訪問する(父親も市場で働いている場合は、彼らも簡単に訪問)。市場の子ども担当のエデュケイターと情報交換を行い、協力して活動を展開している。週に1、2回は他のエデュケイターも同伴する。 

私は木曜日(時に金曜日)の午後、エデュケイターとともに、母親たちが働くお店(鳥肉屋、牛肉屋、お菓子屋、野菜屋、洗濯屋、裁縫道具屋、陶芸品屋などじつに様々)を一軒ずつ訪ね、アクティビティの内容やクラスの中での子どもの様子を報告する。同時に、家の中での子どもの様子、兄弟関係、親子関係、家族関係、仕事について尋ねたり、質問や相談を受けたりする。

 また、毎月第2・第4金曜日に、1時間〜1時間半「母の会」(午前の部と午後の部があり、各自時間の空いている方に参加)を開いて、子どもの健康や発達、栄養、思春期、性教育、家庭内暴力などをテーマに、母親同士で質問や意見・情報交換を行なったり、エデュケイターがアドバイスを行なったりする。エデュケイター自身も一児(生後11ヶ月)の母親なので、母親たちにとっては近親感が持てる相手で、頼りになる仲間という感じだ。しかし、毎回必ず参加する人もいれば、いつも「行く行く」と返事しながらまだ一度も参加したことがない人もいる。母親によって「母の会」への参加には温度差があるようだ。

 市場の子ども担当、親担当の各エデュケイターが、組んで働くことの長所は、子どもの視点と親の視点の両方を通して、それぞれの性格、親子・家族関係の特徴、問題点を知ることができるということだと思う。例えば、親によくたたかれる子どもは、ほかの子をすぐにたたいたりするように、親の行動が子どもの行動に影響を与えている。いつも騒いでアクティビティの邪魔をしては自分に注目を集めようとする子どもは、継父にかわいがられず、家では逆におとなしいというように、親の愛情の欠如が子どもの性格や態度に表れたりする。そのほかの長所としては、子どもがアクティビティを通して学んだことが、クラスの中だけで終わるのではなく、家の中でもきちんと成果をもたらすようにする上で、効果的ということだ。個人的には、自分の小学校時代を思い出すと「毎日先生が家庭訪問に来るなんて絶対嫌やわ、耐えられへん」と思うけれど、市場の子どもと母親たちを見るかぎり、このプログラムは現在のところ、うまく機能しているといえる。

3.路上生活の子ども・若者

 ストリートチルドレンというと、18歳にならない少年・少女で、ストリートで働いたり暮らしたりする子どもたちを指すが、モレーロスの路上生活者の中には10歳前後からそんな生活を始め、今では成長して20歳前後になっている若者(ストリート・ヤングピープル)も多い。担当エデュケイターは男性1名で、時々ほかのエデュケイターと共に働く。ほぼ毎日午前か午後に、地下鉄モレーロス駅出口前の南北に走る大通り(北側と南側)、市場の周辺、市場北部の公園の4ヶ所を拠点に暮らすチャボス(メキシコでは子どもや若者のことをこう呼ぶ)を対象に活動する。彼らはたびたび拠点を変え、新居住者がやってくることも多い。私は火曜日の午後に、エデュケイターに同行している。現在の活動対象者は、

・大通り北側のカップル(少年17歳と女性21歳、生後11ヶ月の一児の親)と少年(12歳)。

・大通り南側の自家製ビニールハウスに住む少年(14歳)、青年男女4人(20〜23歳、男3女1)と時々一緒に生活するカップル(21歳)。

・市場前の男性5人(18〜23歳)。

・公園の男性1人(19歳)。

ほぼ全員が家族とのコンタクトはほとんど持たず、路上を住みか・仕事場にしている。

メキシコシティ出身者もいれば、イダルゴ州(メキシコシティ北部)やゲレロ州(南西部)、オアハカ州(南部)などの地方から、年少のころに家族や親戚と共にメキシコシティにやって来た人もいる。彼(女)らと「エドニカ」は、モレーロス・プロジェクトが始まって以来の付き合いなので(約3年前)、私がボランティアを始めたときは、すでにエデュケイターとの信頼関係が充分できていた。私やエデュケイターをみかけると、ドラッグ使用を一時やめ、こっちに近づいてきてストリート独特のあいさつをしてくる(手の平と平をパチン、次にこぶしとこぶしをゴツン)。彼らが働いている場合は、近くで一段落するまで待つ(車の窓ガラス拭き、市場のゴミ清掃員、ガソリンを口にふくんで火をふく芸など)。無理に話しかけたりはせず、常に彼らからの参加を待つ。ドラック(シンナーのようなもの)を一時やめるのは、私たちを尊重している証し。挨拶の仕方でその日の気分がすぐにわかる。「調子はどう?」という会話からはじまり、健康や栄養、ドラッグ、性、人権、仕事、周りの人、環境などあらゆることについて話をしたり、相談にのったり、ゲームをしたりする。また、モレーロスのチャボス全員でサッカーをしたり、グループごとに映画にいったりもする(長期休暇以外の毎週火曜日は学校や施設関係は無料なので)。

彼らの話を聞くと、路上生活がどんなに困難でいかに多くの危険と直面するのかということを知ることができた。例えば、映画に行っている間にD.F.(メキシコ連邦区)の清掃車がやってきて、ビニールハウスや他の持ち物をすべて排除されてしまったり。夜寝ている間に他の路上生活のおとなに殴られてお金や食べ物を奪われたり。

稼いだお金を人に預けていてそのまま盗まれたり。仕事中に火傷をしたり。長期間お風呂に入らないために身体中がただれて痛んだり。栄養不足でやせていたり。長年のドラッグ依存により極度に視力が低下したりなどなど。「いったい彼らはこの先どうするんだろう?」という疑問が頭から離れない。18歳以上の若者を受け入れてくれる施設はないし、彼らを対象に働くNGOもほとんどない。年少時代を他のNGOで過ごした経験を持つ子も多いが、結局路上に戻っている。

ある商人の話によると、モレーロスにはたくさんの商人が存在し、チャボスに食べ物や衣服を提供することが多いため、他の地域に比べて比較的生活しやすいのだそうだ。

商人たちとしては、彼らの生活の改善を期待して援助をするのだけれど、何も変化がみられないと腹をたてたり、失望したりする。チャボスが路上生活から抜け出す1つの方法として、周りの人々や組織、コミュニティー全体が、彼らを支援できるような体制を作っていくことが必要ではないかと感じる。が、そのためにはまず、路上の子どもや若者自身が自分の人生を変えていこうという意志と希望を持ち、努力することが必要で、コミュニティー側からの積極的な協力と両方が不可欠だと思う。そして、それぞれのモチベーションを高め、両者の橋渡しをしていくのがNGO「エドニカ」の役割だと思う。

4.感想

 私は、「ストリートチルドレンって誰だろう?どうやって生まれるんだろう?」という疑問から“考える会”のスタディー・ツアーに参加したり、彼らについて書かれた本を読んでいくうちに、「彼らの周りで生活したり働いたりする一般の人々はどのように彼らを捉え、接しているのだろう?」などの新たな疑問がわき、それがきっかけでNGOエドニカでボランティアを始めました。ストリートチルドレンだけを対象に活動しているNGOと比べると、エドニカの活動対象は非常に広く、はじめは「こんなにいろんなことをいっぺんにできるんかな?」という疑いに近い思いはありました。

でも、実際に一緒に働いてみると、各エデュケイターの役割分担が明確化され、プロジェクトがきちんと組織化されていることがわかりました。毎日の仕事は、満足のいく日があったり、気分がどーんと重たくなる日もあったりと、決して簡単なものではありませんが、だんだん地域のみんなとの信頼関係が深まって、つっこんだ話ができるようになったり、エデュケイター同士の協力やコミュニティーからの応援もあって、エネルギーも新たに、自分たちの目的に向かって活動し続けています。一番苦労した、あるいは今もしていることは、モレーロス庶民や路上独特の言い回しを理解すること。

生きている言葉を理解することは本当に難しいけれど、私の質問攻めにも懲りずに、きちんと説明をしてくれるエデュケイターに非常に感謝。そして何より、圧倒的な人材不足や資金不足にもかかわらず、ずっと活動を続けているNGOスタッフを心から尊敬しています。最後に、現地の人々の生活様式や考え方など実際に彼らと接してみなければわからない多くのことを直接知ることができて、ボランティアをしていて本当

に良かったと思います。

(なかむら れいな、学生)

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