4月号(NO.91)以降、お休みしていた連載復活!
メキシコにおける
子どもの売買、セックス観光、ポルノ、買春について
著者/ノルマ・エレーナ・ネグレーテ
これは昨年12月に横浜で開催された第二回「子どもの商業的性的虐待搾取に反対する世界会議」のために、NGO「カサ・アリアンサ」と「オードリー・ヘップバーン子ども基金」および「ECPAT」が共同作成した報告書『中米とメキシコにおける子どもの売買、セックス観光、ポルノ、買春に関する調査』の一部です。 著者/ノルマ・エレーナ・ネグレーテ
これは昨年12月に横浜で開催された第二回「子どもの商業的性的虐待搾取に反対する世界会議」のために、NGO「カサ・アリアンサ」と「オードリー・ヘップバーン子ども基金」および「ECPAT」が共同作成した報告書『中米とメキシコにおける子どもの売買、セックス観光、ポルノ、買春に関する調査』の一部です。
その4 商業施設もしくは取引、そして「赤い産業(性産業)」のつづき
Cエスコート(同伴女性)とマッサージ・ハウス
メキシコ南東部のチアパス州では、売春を促進するものとして、もう一つ、州や一部地域の地方紙に出される「広告」というものがある。この手の広告欄は、毎日、クアルト・ポデールやディアリオ・デル・スール、ディアリオ・デ・チアパスといった州紙や、エル・オルベ、エル・ソル・デル・ソコヌスコといった地域紙で、必ず見られる。
そこには、お偉いさん相手の同伴女性やコンパニオン、あるいはプライベートなパーティーへの同伴女性を紹介する業者が載っている。それらの業者は、秘密厳守と信頼性を売りにする。「ラテンの愛人」といった文句で紹介される、マッサージ・ハウスの広告もよく出ている。そうした例をいくつか挙げてみると??「プライベート・パーティへの同伴女性やモデルを紹介します:秘密厳守・信頼性抜群・プロの仕事」、「シャーリー・マッサージ:リラックスしてください!エグゼクティブのみ」、「サンクリストバル市、コミタン市、パレンケ市、プエルト・アリスタ市での観光ガイドと同伴女性を紹介します」、「楽しいスクール・ガールズ、24時間ライブ??常にあなたに特別なものを提供します」、「あなたと私、ふたりきりのライブ??後悔させません!」、「私とつながって??完璧ライブ!」、「ライブな誘惑」、「愛されましょう」、「あなたの夢が現実に」。
これらのほかに、01(900)といった電話のホットラインで、「夢を叶える約束」をしてくれる広告もある。例えば、電話番号に続いて、「待ちきれない」、「試してみる?やっちゃおう!」、「ふたりだけで、泣かせるほどの」、「本物のキューバン・ガール」、「あなたの時間をちょっとだけ私に」、「私をあなたのものにして」、「あぶらののった、抑制なしの」、とか書いてあるのだ。ここに挙げたものは、この州のすべての地方紙に1ページ全面を使って広告されているものの、ほんの一部にすぎない。
こうした広告の多くは、デートや面会の約束をとるための電話番号が、皆同じ携帯番号になっていることから、一つの大きなネットワークもしくは同じグループに属する業者のものと、考えられる。これらの業者(同伴斡旋業者やマッサージ・ハウス)の一部は、そこで働く女性たちに、その友人を紹介してもらうことで、新しい働き手をみつけている。女性がこうした業者にひかれるのは、何より金銭的な理由による。例えば、「1時間で、500ペソ(約6500円)稼ぎたい女性、探してます。幅広い選択肢あり」といった勧誘のセリフにひきつけられるのだ。(コンタクトしたい女性は、携帯電話へ電話をかける。)
広告には常に、とても若い女性が小さいビキニやシースルーの下着を身につけ、胸を出したり、お尻をみせたり、場合によっては陰部までみせた恰好でポーズをとっている写真が載っている。その表情は、アグレッシブなものから優しげなものまで様々だ。
このことについて、役所は、多くの女性が路上やエスコート業者で商売をしているためにその存在が把握しづらい、と述べている。彼らは言う。
「エスコート業者、マッサージ・ハウスの活動を指導監督するのは、とても難しいのです。なぜなら、新聞広告には、その住所が載っていないからです」(州保健省長官、バヤルド・ムニョス・マルティネス氏。2000年6月18日付、週刊PAGINASより)
マリオ・アルベルト・トルヒージョ氏によると、こうした闇ビジネスは、その需要と供給のバランスが維持される限り、存続するという。また、女性が性産業に入っていくのは、チアパス州の経済状況にも原因があると言っている。つまり、「ゲリラ(サパティスタ民族解放軍)の存在が、(彼らを弾圧するために呼ばれ、性産業をよく利用する)軍人をこの州に集めました。また、多くの中米の住民は、トゥクストラ・グティエレス市(チアパス州の州都)へ来たがっています。生きていくために、仕事を探しに、この街へ35000人という人々がやってきます。それが売春を生み出しているのです」。チアパス州人権委員会の人は、通りでの売春は、万一逮捕された時に支払わなければならない罰金が3000ペソ(約49000円)に値上げされたためにかなり減少した、と指摘している。以前は、罰金も250ペソだけだった。その値上げが、売春を減らしたというのだ。「以前は、売春婦たちも、罰金を支払っては、また通りに立っていました」と、彼は言う。また、「(売春が広がることには)メディアにかなりの責任があると思います。彼らがこうした業者の宣伝をしているのですから」とも。「そうしたマスコミの対応に関しては、まだ何の規制もありませんから」と付け加える。(2000年6月18日付。週刊PAGINASより)
その5 制度的対応
チアパス州における商業的性搾取に対する制度的対応を考えるとき、特にその介入方法に関して、この問題専門の公的、社会的あるいは市民レベルの対応策が最も欠けていると言える。こうした搾取の発生を予防するにせよ、犠牲者を救い出しリハビリをするにせよ、搾取のネットワークを崩すにせよ、具体策がなさすぎるのだ。とはいえ、搾取の危険にさらされている子どもたちに対する対応プログラムや活動を報告したレポートがあることだけは、述べておこう。
その6 法的な分析
@チアパス州における少年、少女、若者の売春と人身売買
チアパス州では、未成年を対象とした売春や人身売買、性産業への派遣、そこで行われている未成年の飲酒、そうした商売につかせるための未成年者の不法入国など、すべてがメキシコ合州国の加盟している国際協約に違反する行為である。州法にももちろん違反しており、州刑法でも有罪となる行為だ。行政法、州保健法やトゥクストラ・グティエレス市のアルコール飲料の販売消費に関する条例、あるいはあのおかしな「赤い産業の営業に関する条例」にさえ、違反している。
これらの州法や条例は、これまでに記述してきた行動をすべて禁じている。しかし、実際には、そうした行動(商売)が常に定期的、もっと言えばごく当たり前に起きていることは、紛れもない事実だ。しかも、グアテマラ?メキシコの国境を越えてくる大勢の若い女性たちのおかげで、毎日増加しているとさえ言える。
チアパス州の刑法によって罰せられるべき犯罪は、法律上、未成年者に対する一時的自由の剥奪、あるいは性的虐待といった形で定義、記録される犯罪だ。また、(性産業の)“黙認地帯”でのアルコール販売や、施設内での未成年へのアルコール販売も、犯罪と見なされる。未成年者がそうした施設内にいること自体が、すでに犯罪だ。これらすべての行為が、州の保健法やそのほかの条例に違反している。
にもかかわらず、行政権力側は、法律に従って行動することや、それにそった調査を始めることを、怠ってきた。そのため、性産業に従事する店主やマネージャー、ビジネス関係者は皆、罰せられないことをいいことに、違法な活動を続けている。
A不法移民
チアパス州で売春に従事している女性の大半は、バーなどの商業施設で働くために、メキシコへ不法入国した外国人だ。このことは、一般の法律の条項、つまりメキシコ国内における外国人の入国形態、滞在形態、活動形態に関する法律に違反している。そう考えると、シウダー・イダルゴの町でよく見かける人や物の違法な流れは、政府やその役人がいかに法律を行使する努力を怠ってきたかを示す、良い例だといえよう。
性産業にかかわる少女、少年、若者たちは、メキシコに入国してくる人々の合法性をチェックするために存在するはずの連邦公務員がいる国境の橋の、目と鼻の先で不法入国している。この国境越えは、最悪投獄もありうるほど重大な違法行為だ。
にもかかわらず、こうした違法な人、子どもの往来は、白昼、しかもそれを取り締まるべき立場にいる役人たちの承諾のもとで、進行している。人々は、(国境を流れる)スチアテ川に浮かぶ「タイヤ・ボート」に乗って、グアテマラ側からメキシコ領へと渡り、それを止める人は誰もいないのだ。
メキシコの連邦法は、外国人の不法入国を禁じているだけでなく、移民法に定められた基準に則していない外国人を、従業員として雇うことも禁じている。
シウダー・イダルゴとカカワタンの(性産業)“黙認地帯”には、タパチューラ市のバーや店舗と同じく、合法的許可を持たない(多くは外国人の)ウエイトレスが働いている。実際、連邦労働法では、これらの場所で働いているような外国人男性・女性を雇うことは、禁じられている。また同法律は、未成年者が性産業で働くことも禁じているし、そうした場所での労働時間数や休息についても、一定規則が定められている。
これらの法律を少ししか、あるいはほとんど守らないということは、連邦法そのものに違反していることを意味する。しかし現実には、こうした違反を取り締まるための行動は、何も起こされていない。それどころか、役人が未成年の売春婦/夫に(性産業をコントロールするために売春婦/夫に課した)「健康カード」への登録を実施する際、売春婦(夫)自身が、店の行なっている違法行為を隠すような行動をとる。自分の年齢などを偽って報告するのだ。
チアパス州の南部で売春を行う「ウエイトレス」たちが、不法入国者であることは、明らかな事実である。また、彼らが国内で合法的に仕事につくための許可書類は、何一つ存在しないことも明白だ。が、そのことは、性産業の店のオーナー、マネージャーたちの、従業員への良い恐喝材料となっている。つまり、雇った外国人たちに、言うとおりに仕事をしている限りはその不法滞在を移民局には告げない、と言うわけだ。
B司法レベルでの結論
連邦公務員自身が法律の存在を無視し続けるかぎり、法律違反は既成事実として残るしかない。それは、誰でも簡単に違法行為を行えるということを意味する。それはすでに述べた話の通りだ。
とはいえ、売春行為、不法入国、性的虐待の対象となっているのが未成年だということを考えると、とにかくメキシコの法律や、メキシコが批准した国際法や条約をしっかり守り、適用する努力を強めることが、急がれる。そのためにはまず、子どもや若者の権利に関する法律の改正を推進するのもひとつ手かもしれない。そうすることで、既存の法律も、ただの条文の寄せ集め、机上の空論ではなくなるかもしれないからだ。事実、今のところは、既存の国際的な条約も国の法律も、この国の行政において、ほとんど存在意味がない。
役所自体が外国人の不法入国を手助けしている限り、売春や性的搾取にかかわる未成年の数は増え続けるだろう。実際、人が大量に流れ込んでくるのを止めたり、規制したりする現実的手段は今、何もない。そして、このシウダー・イダルゴ地域での人の往来は、完全に無法化している。周知の事実となっている。またそれと同じ現象が、メキシコ国内の東へ西へ、更には米国との国境にまで広がっている。
今の状況を変えるためには、まず地域の行政府が、性産業にかかわる商業施設にできる限り強い影響力を持つことが必要だ。そして、有無を言わせない形で、店側に法律を遵守させるよう、強制しなければならない。更には、行政側が行動しやすい法的規則を作り直し、現在は法律外で活動している性産業が、合法的な枠組み内で活動するようにしていかなければならない。
一方、最近、アルコール飲料を販売する商業ビジネスに関して、司法が、様々な呼称を定めたという事実がある。バー、レストラン、オードブル・センターといった呼び方だ。が、これらの店舗がやっていることは、どれも同じこと=アルコール販売だ。同じことをしているのに、幾つもの違った呼び名をつけるのは、かなりばかげているうえ、意味のない混乱を招く可能性を持つ。
このように、法律自体がそれを行使する立場にある行政府や役人が行動しにくい内容になっている、あるいは役所がきちんと自分の役目を果たす気がないとすれば、法律を遂行する組織の役割や、法の条項改正や問題解決につとめる司法・連邦組織の存在意義とは、いったい何なのだろう? 人々が法律を守ろうとしないのは明らかに問題だが、それよりも深刻なのは、個人的な目的や利害のために、違法行為に十分に介入しようとしない役人が存在するという現実だ。そして、それはこの国の社会生活が調和のとれた形で発展することを妨げている。
それらの事実を踏まえて、私たちはここで以下のことを提案したい。
☆つづく☆
(訳・工藤)