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メキシコ市政府のストリートチルドレン政策
PART 1
今夏、久しぶりに、メキシコ市政府が行っている、現在のストリートチルドレン政策について、調べる機会を得た。約8年前、初めて私がストリートチルドレンの取材をした際、子どもたちとの接点を最初に提供してくれたのは、政府の社会保護庁(Proteccion Social)という役所だった。今回は、それまでずっと市政を握っていた与党・制度的革命党(PRI)とは違う、初めての野党政権(民主革命党・PRD)による政策になっていたため、ストリートチルドレン問題の担当機関も変わっていた。
PRDの市政は、2年前から始まった。連邦政府が与党PRIから72年ぶりに野党PAN(国民行動党・右寄り)の政権に変わる、12月1日以降も、メキシコ市政府は、PRDのままだ。彼らは、どんな政策をとっているのか?
現在、メキシコシティのストリートチルドレンに対する市政策を担っているのは、FINCA(ストリートチルドレンと依存症のための機関の財団)という、市が98年に新しく創設した機関だ。これは、名前からわかるように、公的・私的資金源からお金を集めて、ストリートチルドレンや依存症(アル中、ヤク中など)のためのプロジェクトに投資するための「財団」なのだが、今のところ、自前のプロジェクトに細々と投資し実行することで、手一杯だ。
FINCAの活動分野を簡単に図で説明すると、以下のようになる。
ストリートチルドレンに対して、直接・具体的な支援をしているのは、「ストリートチルドレンの成長と資格訓練の支援局」(以下、支援局)だ。「支援局」は、今のところ、ビジャ・マルガリータという居住施設を中心にして、ストリートチルドレン支援を実施している。
ビジャ・マルガリータは、メキシコシティの北西部にある施設で、現在、ストリートもしくはほかのストリートチルドレン支援NGO(非政府系組織)から来た35人の子どもたちが、共同生活をしている。年齢は6歳から18歳で、そのうち12人が女子だ。この2年間に入ってきた女子の中には、10人、妊娠中の少女もいたという。
現在いる子どもたちのうち、30人は学校へ通っており、12人が職業訓練を受けている(通学しながら訓練を受ける子どももいる)。2人はすでに仕事についている。
職員は、計80名おり、子どもたちの指導者(Tutor)をはじめ、医者、心理カウンセラー、精神科医、ソーシァルワーカーが、交代で勤務している。指導者は、18名が午前、午後、夜間、の3交代プラス日曜祝日組に分かれて勤務しており、夜間以外のスタッフは、ストリートエデュケイターとして数時間、路上にいる子どもたちも訪ね歩く。路上からここへ来た子どもたちは皆、その指導者たちに通りで出会い、誘われて、自発的にやって来た。
通りから地苦節自発的に来た子どもは、大抵施設に落ちつくという。逆に、ほかのNGOから紹介されてきた子どもは、逃げだしたり、いなくなったりすることが多い。99年8月から2000年8月までの間に、計133名の子どもがこの施設に出入りした結果、一部は逃げだし、一部はソーシャルワーカーの指導で、家族が心理セラピーを受け、家庭が子どもを受け入れられる状態になったところで、実家へ帰った。その残りが、施設にいる35人だ。
子どもたちの指導の柱は、心理カウンセリングを通して、家庭や路上で受けた心の傷を治すこと、指導者を通じて個人的な世話をすることで子どもの自己肯定感を育むこと、そして、施設内のおとな全体の指導力で、社会規律や普通の生活態度を身につけさせることだという。80名の職員は、それらを念頭に子どもたちと接している。
指導のうえで、一番難しい点は、セックスなど、人間の基本的な行為に関して、欲求を押されることが難しい子どもが多いこと、心が年齢相応に発育しておらず、非常に幼いということだという。そういう子どもたちは、自己コントロールが効かず、社会に参加できる状態になるように指導するのが、とても難しい。具体的には、おねしょする、ベッドで寝られず庭で寝る、すぐ暴力を振るう、などの行為が見られるという。
こうした子どもたちを、将来は100人くらい預かりたい、と所長は言うが、そのためには、より多くの予算ともっと高い職員の質が要求されるだろう。
郊外の広々とした敷地に築かれた、このビージャ・マルガリータは、子どもたちの居住環境としては、ほかのNGO施設に比べ、かなりいいと思われる。が、問題は、お役所的な仕事意識が抜けないために、心が不安定で何よりも愛情を必要としているストリートチルドレンの子どもたちを引きつけるだけの魅力を持つ職員を確保するのが、難しい点だろう。NGO側のFINCAに対する評価は、その点において、厳しい。
「彼ら(FINCA)の理念やプランの内容は素晴らしいものです。でも、それを実現するのに十分な予算がないことと、職員の採用にも、お役所にありがちな、昔ながらのコネや学歴優先な面が強く、本当に子どもたちに必要な知識と能力、人柄を兼ね備えた人が雇われていない。それが、一番の問題点でしょう」
あるNGOのエデュケイターたちは、FINCAについて、そう語っていた。 では、私自身は、そこに暮らす子どもたちの声を聞き、ほかのNGO施設、あるいは以前の政府の政策や政府系施設の運営内容と比べて、どんな感想を持ったか。それについては、次回に述べることにしたい。
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