ストリートチルドレンと向きあって…

渡部千絵

 「国際協力」といえば私達はすぐ、募金や経済的な援助を思い浮かべる。しかし、私はそれだけだとは思わない。国境を越えて人と人の心のふれあいをする事こそが、その第一歩ではないだろうか。
 私は昨年、子共レポーターとしてメキシコのストリートチルドレンに会う機会を得た。メキシコ…それは私にとって太陽の国、明るく輝いている国というイメージしかなかった。しかし、一方ではそこに居場所をなくし路上で生活するストリートチルドレンがいるという。
 15時間のフライトの末、無事メキシコシティに到着した。そして、早速彼らが保護されている施設訪問が始まった。その時驚くべき光景が目に飛びこんできた。施設の前にシンナーを吸いながら歩いている5・6人の少年達の姿があったのだ。惑いながらも勇気をふりしぼり、明るい笑顔で挨拶した瞬間のことだった。いきなりそのうちの一人が「バシッ」と私の頬を殴ってきたのだ。
 あまりのショックと恐ろしさに立ちすくみ、茫然としてしまった。涙がこぼれた。その場は同行した大人が収めてくれたが「日本へ帰りたい」と思った。しかし、ふと我に返り、「何の為にここまで来たのか、こんなことでめげてどうする」と自分に言い聞かせ、もう一度声をかけた。すると、思いがけず今度は「オラ!(こんにちは)」と笑顔でこたえてくれたのだ。
 よくみると彼らに暗く沈んだ様子がないことに気が付いた。彼らは兄弟のように仲良く互いに励まし合い、陽気に笑い日々を一生懸命生きているのだ。私はそんな姿に大きなパワーと心の暖かさを感じた。親からの虐待、レイプ、ドラッグ中毒という劣悪の環境に身を置いているというのに・・・・。
 シンナーをやめるように話すと「体に悪い事は分かっている。でもお腹が一杯になるし、嫌なことも忘れられるんだ。」と力なく笑う彼ら。そこからは想像を絶する生活の悲惨さが伝わってきた。日本で何不自由なく暮らしている私達との差は何だろう。私は胸が痛くなり、自然と涙が頬を伝い止まらなかった。
 このような状況にはメキシコの不安な社会が大きく起因しているのはいうまでもない。せめて彼らの気持ちをわかってあげられる友達になりたいと思い、それから毎日路上に行って話しかけたり、施設に泊まったりして、私は精一杯、体当たりの日々を過ごした。そんな思いが通じたのか、彼らも次第に打ち解け、過去の出来事も話してくれるようになったのだ。
 帰国の前日、私達は友情の証に施設の壁に手形をつけた。そして「あなた達と一緒にいたら日本人になりたくなっちゃった」と言ってくれた彼女達。本当に友達になったのだ。ある少女が「私達と違ってあなた達にはちゃんと両親がいるのだから私のような過ちは犯さないで、親とより理解しあえるよう対話する努力をしてね」と涙ながらに言ってくれたこの言葉は今でも強烈に心に残っている。
 今回の体験を通し数多くのことを学ぶことができた。そして、あらためて日本は平和があたり前になりすぎて、人々が豊かな感受性ややさしさを忘れがちであることを認識することができた。今、私は今回の体験ビデオを一人でも多くの人に見てもらい、彼らの心の叫びを伝えたいと思っている。そして、ささやかな私の行動が、どこかで国と国との架け橋となり国際協力へと結びついてくれることを願っている。私は今日もスペイン語の勉強に励み、愛と感動を与えてくれたメキシコの地へ再び行こうと思っている。苦しみをかかえながらも精一杯生きている私の友達に会うために・・・。

目白学園高校 在学時寄稿

写真中央右:千絵さん